自動車業界の合従連衡

自動車業界の勢力図を見ると興味深い考察ができます。中でもフォルクスワーゲンの強さの秘密は学ぶべきところがあります。
ページ
トップ

自動車業界の勢力図

前回は日本車の海外での高い評価についてご紹介しましたが、今回は自動車業界の勢力図をテーマにしました。
国内だけで見ても人口の8%を超える約540万人が自動車関連の職についており、現代経済とは切っても切れない産業です。

500万人以上が関わる自動車産業

自動車産業の市場規模

様々な産業の中で最も規模が大きいのが自動車産業です。
メーカーを頂点に、巨大な裾野が広がり何万・何十万社という中小企業の生み出す製品が結集され1台の自動車が完成します。

自動車メーカーを頂点にしたピラミッド

また生産だけでなく、ガソリンスタンド・自動車保険・中古車販売・買取や査定など世界経済に計り知れない影響を与えています。
今回はそんな車業界のメーカー勢力関係を具体的な社名や車種名を出してご紹介します。

自動車に関わる様々な業種

日本の自動車業界の売り上げは50兆円を超えるといわれ、先進国の国家予算級の規模を持っています。
日本市場にもトヨタをはじめ日産やホンダ、スズキなどの主要メーカーが競って新型車を発表し続けています。

国内メーカーの歴史と合従連衡

国内自動車メーカーの勢力図を改めて確認すると買収や合併の繰り返しで複雑な親子関係が成り立っているのがわかります。
その中でも突出した国内メーカーとして最大規模を誇るトヨタは自動織機製作所の自動車部門として誕生して以来、まさに日本とともに成長してきたビックカンパニーです。

国産最大手メーカー

有名な話ですが、トヨタの前身は愛知県豊田市に拠点を持つ「豊田自動織機製作所」です。
二代目の豊田喜一郎は「純国産自動車を作る!」という堅い意思でアメリカのフォード製自動車やドイツ製の自動車用工業機械などを輸入し研究開発に没頭しました。

もちろん社内では反対の声もあり一筋縄にはいきませんでしたが、彼の強い思いに心打たれた技術者達の努力は少しずつ形になっていったのです。
創業当時は性能・品質ともに輸入車には到底及ばず、故障やクレームが発生しては現場に駆けつけ修理し開発へフィードバックするという日々でした。
歴史を知ると、同社の品質と信頼性の高さは創業当時から受け継がれたものと言っても過言ではないですね。

トヨタ1号車

トヨタ自動車の歩みは2014年3月にTBSの特別ドラマ「リーダーズ」で映像化され話題になりました。
喜一郎を演じる佐藤浩市さんの情熱的な演技により当時の技術者達のアツイ思い・悔しさ・喜びがひしひしと伝わってくる作品です。

ドラマ化されたトヨタの歴史

このトヨタひとつをとっても日野自動車やダイハツ工業に出資し、技術協力をしたり完成車を供給するOEMなどの関係が成り立っています。

例えば、トヨタのトラックの多くは日野自動車で組み立てられ、トヨタの北米向け高級セダン・カムリはダイハツのフラッグシップモデルとしてOEM供給されています。

ダイハツOEMのアルティス

またトヨタに次ぐ国内大手自動車メーカーである日産は、戦後の成長の過程とともにプリンス自動車を合併しています。
日産の人気セダンであるスカイラインはプリンス自動車から受け継いだモデルでもあるのです。

プリンス自動車のスカイライン

日産もまたスズキやマツダと協力しながら国内の自動車勢力図を構成していますし、現在はフランスの自動車メーカー_ルノーと同盟関係を結んで事業展開しています。

世界シェアでもTOPを走る日本

世界的に見ても日本のトヨタや日産の存在感は確固たるものを占めてきています。
トヨタはアメリカのGMやドイツのフォルクスワーゲンにをゴボウ抜きにし、世界1位の販売台数を誇ります。

世界的な趨勢の中では既存の自動車メーカーに次いで韓国の現代自動車が大きなシェアを占めてきています。
近年、飛躍的な品質向上がみられる韓国車を筆頭に今後はアジアンカーの動向に注目が向けられることと思います。

注目が集まるヒュンダイ自動車

欧州の巨人フォルクスワーゲン

欧州のメーカーとして圧倒的な強さを見せるフォルクスワーゲンはポルシェやアウディなども傘下に持っており、非常に高いシェアを持っています。

フォルクスワーゲンのグループ

ではなぜフォルクスワーゲンははそれほど強いのでしょう。
人気車種であるゴルフやパサートなどのクルマをいかに戦略的に売っていくかというマーケティングの強さと開発や設計なども高い水準で行われることが挙げられるでしょう。
具体的にはMQBと呼ばれるモジュールを使ったプラットフォーム戦略にもあらわれています。

設計の自由度もあがり、開発や生産にかかるコストを抑制することができます。
代表的な採用例がポルシェ_カイエン・アウディ_Q7・VW_トゥアレグの3兄弟関係で、実はこの3車種は共通のプラットフォームから成り立っています。

VWが上手いのは基礎となるプラットフォームは共通化しつつも、エンジンスペックや足回り、内装の仕上げ方でそれぞれを唯一無二のクルマに仕上げている点です。
クルマを作ってどうやって世界に売っていくかというノウハウがしっかり明確化しているのです。

VWグループのSUV3兄弟

共通化によるコスト削減は大いに結構。
ですが、それにより各車種のキャラクター色が薄まり「似たり寄ったり」になってしまうことだけは避けていただきたいですね。

フォルクスワーゲングループは日本の自動車メーカーにとって良いライバルであり、お手本にすべき自動車メーカーであるといえるでしょう。