若者のクルマ離れは本当か?
テレビ・新聞では自動車業界の低迷要因の一説を「若年層が車に対して興味が無くなったため」と報道しています。
若者が車を購入することを是としてないといわれて久しく、私の知り合いは18歳の時に運転免許を取得してから十数年が経ちますが、いまだにクルマを購入していません。
また運転免許を取得するまでまったくクルマというものに興味を抱かず、どちらかというとむしろ拒否していたと言います。
やはり要因は、経済的な理由が第一です。
経済状況も雇用環境も高度成長期やバブル期とは異なり、車を当然のごとく購入する状況にないのが一つです。
日本で車を持つには経済的ハードルが非常に高いのです。
ざっと挙げただけでも、一般的な2000〜2500ccの普通車を所有したとして年間50万円程度の維持費は覚悟しなければなりません。
【自動車維持に掛かる年間費用】
自動車税:45,000円
ガソリン代:150,000円
車検・整備等:100,000円
駐車場:200,000円
合計:495,000円
これに何百万もする自動車価格やローン代が上乗せされると思うとほしいと思っても中々手を出し難いのが現実です。
ましてや何百万もする車も売却時の査定は数十万円に目減りしてしまうというありさま・・・
とはいえ、東京など大都市はさておき、地方の交通事情を考えるとクルマの重要性は無視できません。
クルマがないと通勤やレジャーなど日常で困る状況がたくさんあります。
したがって若者もクルマに対して無関心ではいられないのです。
好きか好きでないかを問わず、車を購入する必要性というものは、今もなお高いといえるでしょう。
ではなぜ「若者の車離れ」なんて事が言われるのでしょうか?
例えば運転免許保有率に関しても20代の男性に関しても現在でも85%から90%以上の人が取得しており、30年前と比較してもそれほど極端に数値の傾向が変わるということはありません。
むしろ女性の免許取得率は30年前と比較して格段に向上しています。
全体的に見ればクルマを運転する人は昔よりも今の方が増えているということになります。
地方においては交通の足としての認識が大きく、都市部においては保有率が減少していますが、若者が車離れを起こしているいえるのは、新車に対する興味やクルマそのものに対する興味が確実に減少しているということです。
ゲームやパソコンが普及したことによる単純な行動範囲の縮小という面もあります。
実家暮らしの若者に関しては親のクルマを運転することはあっても自分のクルマを保有しようという意識が減少しており、クルマを保有することに対する経済的な負担を強く認識する傾向にあります。
それと同時に考えられるのは若者の絶対数の減少です。
若年層そのものの数が少ないため、むしろ自動車メーカーの方が若者のニーズを積極的にくみ取る必要がなくなったと考えても不思議はありません。
さらに言えばメーカーは若者のニーズをしっかり理解しているのか疑問になることがあります。
最近の事例でもトヨタが「若者へ車の喜びを!」というコンセプトの元発売した「86」は思いの外高年齢層にHITし、40代以上が半数を超える結果となりました。
その反対に期間限定で復活した「70ランクル」は200台/月の販売目標を掲げていたのに、販売開始前に20倍近い予約が殺到したと言います。
いずれにしても日本車が好調に売れることは嬉しい限りですが、販売目標や予想顧客層を大きくズレた結果はいかにメーカー側がユーザーのニーズを把握していないかを物語っています。
特に20代〜30代向けの需要は同世代にしかわからないことです。
正直、私自身も上記の結果は「意外」の一言です。
社内外に関わらずターゲット層の意見や要望を十分に汲み取り、企画に反映することが愛される車作りに繋がるのではないかと思います。
視点を変えれば全体の数が多い、中高年にマーケティングを絞って自動車を開発したほうがビジネス的にも合理的です。
結論としては若者の車離れはある程度真実といえます。
それは経済的要因や生活環境や時代背景の変化などさまざまな要因が組み合わさっていると考えられます。